弁護士佐藤光子のブログ

弁護士佐藤光子が食品安全やペット問題、環境問題、医療問題など関心分野について日々つづるブログです

8週令規制について(動物の為の規制はけしからんと言う論調について)

動物愛護法の8週令規制について、前回書きましたが、いまだに「営業の自由という人権の制約根拠は、他の人権でなければならず、動物の保護のために人権制約するのはけしからん」というような8週令規定の批判がきかれ、法律家の中にもこの論調に同意してしまう向きもなきにあらずで、ちょっと気になるところです。

まず、8週令規制は、動物愛護法の目的達成の手段規制として位置づけられると思いますが、動物愛護法の目的は、その1条に明示で書かれている通り、「国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もって人と動物の共生する社会の実現を図ることを目的とする」と定められており、動物の権利をダイレクトに守るわけではなく、あくまで人間社会に還元される目的となっています。ですので、規制目的は広い意味で人権のためですので、上記の批判は当たりません。

動物愛護法制定の背景事情として、神戸での小学生殺傷事件という痛ましい事件が起こりましたが、犯人の少年が動物の殺傷など残虐行為を繰り返しており、それがエスカレートして人への危害に至ったということが社会問題として認識されたことがあります。同様の行動パターンの犯罪が起こりうることは、広く人間社会にとっても不幸なことです。

法律家の中にも、この動物愛護法の目的をしっかり読んでいないのか「動物の権利」のために営業の自由を制限するのはおかしいと主張する人もいますが、まずはきちんと条文を読み、条文構造を把握してほしいと思います。

動物愛護法の目的をしっかり踏まえたうえで、8週令規制は、憲法上の問題があると感じるのであれば、抽象的に規制根拠が弱いとかいうのではなく、憲法では制約する側と制約される側のバランスが妥当かどうかを審査するために違憲審査基準の議論が積み重ねられてきていますし、諸判例もありますので、その議論をきちんとすべきと思います。どのような審査基準が適用され、それにに照らすと、合理性の幅をどうして超えていて(目的が超えているのか、手段が超えているのか、関連性がないのかなど)、合憲とされている他の立法(消費者保護や環境保全などの諸立法など)と比べてもやはり不当なのかなどの分析が必要と思います。
ですので、「人権の制約根拠は人権である」と言うことは、動物愛護法上の諸規制の批判にはそもそもなっていないのです。