弁護士佐藤光子のブログ

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景品表示法の課徴金制度の概観

食品の偽装問題、誤認表示問題を受けて、違反者が得た利益を剥奪するための制度として、景品表示法の課徴金制度が2014年11月に成立し、昨年4月1日に施行されました。

課徴金の対象となるのは、景品表示法上の優良誤認表示と有利誤認表示です。
優良誤認表示とは、一般消費者に、実際の商品やサービスよりも著しく優良だと誤認させるような表示です。たとえば、添加物を使用した食品に無添加と表示するようなケースがあたります。
有利誤認表示とは、一般消費者に、実際の取引条件よりも著しく有利な取引条件だと誤認させるような表示です。たとえば、メーカー小売価格の半額と表示があったが、メーカー小売価格は設定されていなかったようなケースがこれにあたります。

 課徴金の対象期間は最大3年で、誤認表示をしていた期間が対象となりますが、誤認表示をやめた後に商品や役務の取引があった場合、誤認表示をやめた日から6か月後、または誤認表示を撤回することを新聞に掲載するなど誤認のおそれを解消するための措置を採った日のいずれか早い日までが対象期間となります。
課徴金額は、誤認表示の対象となった商品やサービスの売上の3パーセントです。課徴金の額が150万円未満となる場合には、課徴金は賦課されません。

また、事業者が課徴金の対象となる誤認表示をした場合であっても、それが優良誤認表示または有利誤認表示に当たることを知らず、かつ、知らないことについて相当の注意を怠った者でないと認められるときは、消費者庁長官は、課徴金の納付を命ずることができません(景品表示法8条但書前段)。
景品表示法上、事業者には、表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じる義務が課されていますが、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」というガイドライン内閣府から出されており、このガイドラインに沿った措置をとっていれば、相当の注意を怠ってはいないとされると思われます。ガイドラインで、事業者が講じるべき措置は下記のようになっていますので、これに沿った措置をとることが事業者には求められます。
1.景品表示法の周知・啓発
不当表示等の防止のため、景品表示法の考え方について、表示等に関係している役員及び従業員(関係従業員等)にその職務に応じた周知・啓発を行うこと。
2.法令遵守の方針等の明確化
不当表示等の防止のため、景品表示法を含む法令遵守の方針や法令遵守のためにとるべき手順等を明確化すること。
3.表示等に関する情報の確認
商品又は役務の長所や要点を一般消費者に訴求するために、その内容等について積極的に表示を行う場合には、当該表示の根拠となる情報を確認すること。
4.表示等に関する情報の共有
その規模等に応じ、前記3のとおり確認した情報を、当該表示等に関係する各組織部門が不当表示等を防止する上で必要に応じて共有し確認できるようにすること。
5.表示等を管理するための担当者を定めること
表示等に関する事項を適正に管理するため、表示等を管理する担当者又は担当部門をあらかじめ定めること。
6.表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
前記3のとおり確認した表示等に関する情報を、表示等の対象となる商品又は役務が一般消費者に供給され得ると合理的に考えられる期間、事後的に確認するために、例えば、資料の保管等必要な措置を採ること。
7.不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
特定の商品又は役務に景品表示法違反又はそのおそれがある事案が発生した場合、その事案に対処するため、次の措置を講じること。
(1)当該事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(2)前記(1)における事実確認に即して、不当表示等による一般消費者の誤認排除を迅速かつ適正に行うこと。
(3)再発防止に向けた措置を講じること。

また、自主申告による減額もあります。事業者が、自主的に優良誤認表示、有利誤認表示の事実を消費者庁長官に申告した場合、課徴金額の50%相当額が減額されます(景品表示法9条)。ただし、行政による調査が入った後に、自主申告しても、課徴金は減額されません(同条ただし書)。

さらに、返金による減額も定められています。事業者は、消費者庁に返金計画を届出た上で、誤認表示に基づいて商品やサービスを購入した消費者に代金の一部(商品やサービスの購入額の3%以上)を返金すると、課徴金の減額を受けることができます(10条1項)。