弁護士佐藤光子のブログ

弁護士佐藤光子(東京弁護士会所属)のブログです

保護法益を再検討しないと動物のための規制はできないのか?

 

 動物の虐待防止や業者の規制強化ができないのは、動物と共生するという人権が確立されていないからで、保護法益を検討し新しい人権が確立されなければ、不都合が解消されないかのような見解をみかけました。

動物愛護法が改正され、虐待罪、殺傷罪の法定刑が引き上げられ、現在は改正された条項をより具体化し、人と動物の共生社会へ向けて議員、環境省、実務家、学者が政省令の作成に向けて動きだしているにもかかわらず、このような見解を述べるのは、動物愛護法の理解や、社会的利益を保護法益とする立法について理解されていないような気がします。

この論者は、動物愛護法では「動物の生命身体自体が保護法益ではない」から規制をすすめにくいと主張したいようですが、これまで動物愛護法のもと、厳罰化がすすめられ(今回の改正で殺傷罪は2倍以上に法定刑が引き上げられました)、規制強化がなされてきたことと矛盾します。また「人と動物との共生する社会とは何かを抽象的に議論し、こんな社会はいいな」「こんな人権があったらいいな」と、なにか新しい人権を考えれば、規制強化や厳罰化ができると言っていますが本当にそうなのでしょうか。

「人と動物の共生する社会の実現する社会の実現を図る」ことを目的(1条)とする動物愛護法がすでに存在し、その目的達成のための規定が2条以下に置かれています。動物愛護法は、動物の生命・身体の安全そのものを直接の保護法益としているものではないですが、国民の間に一つの法規範にまで高められた動物の愛護管理の精神を一つの社会的秩序として保護しようとするもので、動物の愛護管理の良俗を保護しようとする社会的法益を保護するための法律です。動愛法の下、「人と動物の共生する社会の実現する社会の実現を図る」ための規制や罰則は、立法や改正に関係する議員たちや議員連盟が関係団体、官庁へのヒアリングや科学的調査、統計をもとに、規制の必要性、他の対立利益とのバランスを考え、統計や社会情勢による社会の人々の動物愛護の気風も踏まえ規定され、その時々「人と動物の共生する社会」の実現を図っています。このような具体的な検討抜きに抽象的に「人と動物の共生する社会」とはなんぞやという議論は空中戦で無意味かと思います。

さらなる厳罰化や規制が必要かは、動物愛護法が動物自体を「保護法益にしていないからできない」という議論になるのではなく、人と動物との共生する社会を実現するために今後さらに必要な条項かどうか具体的に検討課題にすべきです。

論者は、動物愛護法の保護法益だと、人権である営業の自由が制約しずらく、だから別の保護法益の検討が必要とも書いていますが、そう単純比較ではありません。営業の自由は、表現の自由のような精神的自由と異なり、経済的自由なので、社会目的・経済目的の社会的制約を受けます。社会的制約として妥当かは抽象的に保護法益の比較ではなく、規制目的や効果を検討し、具体的な「人と動物の共生する社会の実現する社会の実現を図る」ために妥当かの検討をします。動愛法の罰則は今回の改正で懲役5年と重いものも定めており、営業の自由どころか人権制約の最たる懲役も動愛法の「動物愛護の気風」の保護法益のもとで定められているのです。単純に「動物愛護の気風」が保護法益だから規制できないということではなく、その時の社会状況にかんがみ立法事実を確認し「人と動物の共生する社会の実現する社会の実現を図る」ために必要な条項を定めています。

論者は「共生社会で生きること自体を人間の利益とすること」はこれまで議論されていないと述べていますが、既に動物愛護法がそのような社会を目指しており、議論されているのではないでしょうか。

論者は、保護法益を「一歩進めて」「人と動物が共生する社会に生きることそれ自体を人間の利益に引き付けて考えることの可能性が思い浮かぶ」といいますが、一歩進めなくても、動物愛護法自体が社会的法益として、人と動物の共生する社会を守る(要するに保護法益)ために定められています。

抽象的に「目指す社会を考えよう、その社会は5つの自由に根拠付けられるかも?」「共生社会で生きる利益をなにか考えたらいろいろ解決するかも?」というのは、現行法の分析や新たな提案のための立法事実の検証もなく、利益の中身も不明、法体系の中でどのように位置づけられるのかも不明、その後どのように問題を解決するかの道筋も不明であるのに、新たな人権ができれば、問題が何でも解決できる可能性があるかのような記載をするのは誤解を招くと思いますし、現行法の改正で解決するより、解決には程遠いのではないでしょうか。

 

 

TBS・Nスタ「くるりポイ」問題へコメント

スーパーなどでお肉などのパックを開けてトレーを捨ててしまう、いわゆる「くるりポイ」がここのところワイドショー番組で話題になっていますが、今日の夕方のTBS番組Nスタで、法的に問題がないかコメントさせて頂きました。

お客さんには、マナーとしてはともかくも、法的には問題とはいえないですね。

要するに、プラスティックトレー処理を誰がするかのの押し付け合いですが、過剰包装をやめて、もう、このトレー自体、使用しない販売方法に向けて行くしかないのだと思います。脱プラスティックです。

動物愛護法改正まとめ(条文入り)

動物愛護法は今年6月に4度目の大改正をしました。今回の改正の要点につき、以前の記事でもまとめましたが、今回は網羅的にまとめてみます。

 

平成24年の改正の際に、法施行後5年を経過した場合の見直し条項が規定され、特に幼齢の犬猫の販売等の制限(販売日齢の規制)、マイクロチップの装着の義務づけについては必要な検討を行うことを規定されていました。今回の改正では、動物取扱業のさらなる適正化、動物の不適切な取扱いへの対応の強化がポイントです。

主な改正内容です。

 

1. 動物の所有者等が遵守すべき責務規定を明確化
動物の所有者または占有者は、環境大臣が使用保管に関する基準を定めているときは。その基準を遵守しなければならないことになりました(7条)。

 

2.第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

① 登録拒否事由が追加されました(12条)。

環境省令で定める遵守基準が具体的に明示されることとなりました(21条)。
遵守基準としては飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等があげられます。

③ 犬・猫の販売場所を事業所に限定することになりました(21条の4)。

④出生後56日(8週)を経過しない犬又は猫の販売等を制限することになりました(22条の5)。但し、文化財保護法の規定により天然記念物として指定された犬の繁殖を行う犬猫等販売業者が、犬猫等販売業者以外にその犬を販売する場合は、49日(7週)と特例が規定されています(附則2)。

 

3.動物の適正飼養のための規制の強化

①適正飼養が困難な場合の繁殖防止が義務化されました。犬猫の所有者は、繁殖により適正飼養が困難になるおそれのあるときは、繁殖防止のため、生殖を不能にする手術等の措置を講じることが義務化されました(37条)。

都道府県知事は、周辺の生活環境が損なわれている事態が生じていると認めるときは、指導、助言を行い、報告徴収、立入検査等が出来ることになりました(25条)。

特定動物(危険動物)に関する規制が強化され、愛玩目的での飼養等を禁止・特定動物の交雑種を規制対象に追加しました(25条の2)。

④ 動物虐待に対する罰則が引き上げられ、殺傷罪は5年以下の懲役または罰金500万円以下の罰金と規定されました(44条1項)。虐待罪・遺棄罪は1年以下の懲役または100万円以下の罰金となりました(44条2項)。

 

4.都道府県等の措置等の拡充


①動物愛護管理センターの業務が規定されました(37条の2)。

②「動物愛護担当職員」の名称が「動物愛護管理担当職員」に改められ、必置となりました(37条の3)。

③所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合が規定されました(35条)。

 

5.マイクロチップの装着等

①犬猫の繁殖業者等にマイクロチップの装着・登録が義務付けられ、義務対象者以外の所有者は努力義務となりました(39条の2、39条の5)。

②登録を受けた犬猫を所有した者は変更届出が義務付けられました(39条の6)。

 

6.その他

①動物を殺す場合の方法に係る国際的動向へ配慮することが規定されました(40条3項)。

②獣医師による虐待等の通報が義務化されました(41条の2)。

③ 関係機関の連携の強化につき規定されました(41条の4)。

④ 国は、地方公共団体が動物愛護・適正飼養推進の施策のため必要な財政措置等をするよう努めることとされました(41条の5)。

⑤ 施行後5年を目途に施行状況を検討し必要な措置を講ずる事とされました(附則11)。

どんな熱中症対策が必要か(熱中予防運動指針)

前回に引き続き、熱中症の話です。

1 暑さ指数とは?
 よく、暑さ指数という言葉を聞きますが、暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度)=Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は若干気温とは異なります。

 

2 WBGT(湿球黒球温度)の算出方法は以下のようになっています。

  屋外WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
  屋内WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度

 

3 暑さ指数と運動に関する指針

 では、暑さ指数が何度だとどのような対策が必要でしょうか。学校で熱中症事故が起 こった場合、学校はこの指針を遵守していたかどうかが問題となります。

 

① 指数31℃以上 (気温35度以上)

  運動は原則中止

  特別の場合以外は運動を中止する。
  特に子どもの場合には中止すべき。


② 指数28~31℃ (気温31~35度)

  厳重警戒(激しい運動は中止)

  熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動

  は避ける。
  10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。
  体力の低い人、肥満の人や暑さに慣れていない人など暑さに弱い人は、

  運動を軽減または中止。

 

③ 指数 25~28℃ (気温28~31℃)
  警戒

 (積極的に休憩) 熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分

  を補給する。
  激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。

④ 指数 21~25℃(気温 24~28℃)

  注意
 (積極的に水分補給) 熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
  熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。

 

⑤ 指数 21℃未満 (気温24℃未満)

  ほぼ安全
 (適宜水分補給) 通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要。
  市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意しましょう。


【参照】

(公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)

熱中症対策と学校事故

  また今年も熱中症対策が必要な時期になってきました。今回は、生徒が熱中症になったとき、学校が責任を負うのはどのようなときか検討してみようと思います。
 いまは、学校は夏休み中ですが、学校が生徒に責任を負うのは授業中の場合のみではありません。クラブ活動などの課外活動や、学校が主催している行事も含みます。
 学校は、児童生徒の生命身体財産に損害が生じないように注意して指導監督すべきであるという安全配慮義務を負っています。

 部活動中に熱中症になった生徒が脳梗塞をおこし、左上肢に麻痺などの後遺症がのこり、学校の責任が問題となった判例(大阪地裁H28年5月24日)では、学校は安全配慮義務の一環として熱中症予防に努める義務があるとしています。
 この判例では、学校は、生徒が運動等を行う温度及び湿度、行う運動の内容や種類、それが身体に及ぼす影響の程度、補給する水分量などを踏まえ、熱中症の発生を未然に防止することが必要と認定し、この事故時には財団法人日本体育協会(今は財団法人日本スポーツ協会)の「熱中症予防のための運動指針」が周知されていたとして、気温に応じた運動の中止等の配慮が求められていたのに、その指針に準拠した予防対策をとる義務、及び温度計を設置して暑さ指数等の温度を把握する義務を怠り熱中症対策を怠ったとして学校の過失を認めました。 

 控訴審(大阪高裁)も同様の判断をしています。
 このほかにも熱中症の学校事故に関する判例は多くありますが、当日の気候、気温、練習の強度、時間、生徒の年齢、対直、休憩や給水の頻度、過去に事故の経験があるか、事故後の対応など、ケースに応じて状況を総合的に判断し、学校に過失があるかを判断しています。
 体育系の部活動は以前は根性論などあったかもしれませんが、ここ数年の異常な暑さを見ても、無理は事故に通じることになりますので、学校は熱中症事故が起きないよう、指針等を守り、万全の対策をとることが求められていると言えます。

 

【参考】
熱中症予防のための運動指針」公益財団法人日本スポーツ協会
https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid922.html


「学校事故対応に関する指針」文部科学省
https://anzenkyouiku.mext.go.jp/guideline-jikotaiou/index.html

ニチレイフーズ船橋第二工場の見学

冷凍食品の工場見学をしたいと以前から思っていましたが、ニチレイフーズ船橋第2工場の見学の機会をいただき、人気商品のミニハンバーグのラインの見学をしました。よどみなく次々とミニミニハンバーグが流れて行く様子は圧巻でした。

ニチレイフーズの冷凍食品は、商品パッケージに書かれた、食べ方の説明が細かく丁寧です。電子レンジを使用する際、食品によりラップをかけるのかかけないのか異なり、使用時間も秒単位で異なります。高齢化社会が進む中、お年寄りでも読みやすいように、文字も大きめなど工夫されています。

www.nichireifoods.co.jp

発酵と味噌

お味噌は、日本人にはおなじみの食品ですが、味よし、保存によし、体に良しといわれ、デトックスにも効果があります。

お味噌は発酵食品ですが、発酵とは何でしょう。

発酵とは、微生物の働きによって物質が変化し、人間にとって有益な物質を作り出すことを言います。発酵にかかわる三大微生物とは、細菌、酵母、カビで、あわせて発酵菌といいます。味噌はこの3種類ともが関与します。

発酵食品のメリットとしては、食品の栄養分が増える、保存性が高まる、熟成により味や香りがまろやかになるなどがあげられます。

先日、自分で作ってみましたが、材料は大豆、米麹、麦麹、塩などで、意外と簡単に作ることができます。

最近では保存用の容器もセットになった手作り味噌用キットも販売されているようです。

時期によって2~6ヶ月ほど仕込みの期間がかかりますが、お味噌料理のレシピを研究しながら自分のお味噌ができるのを待つのも良いのではないでしょうか。